Google Workspace 活用シリーズ 第3回
マイドライブはあなた個人のスペースです。誰かと業務ファイルを共有したいなら、まず共有ドライブに移動してから共有する——この順番を習慣にするだけで、半年後・1年後に起きるトラブルのほとんどを防げます。その理由と具体的な手順を解説します。
今回の記事の内容をGoogle NotebookLMで動画化しました。併せてご覧ください。
「あの人が退職してからファイルが消えた」——でも本当の問題はどこにあったか
先日、顧問先の総務担当の方からこんな相談を受けました。
「営業の担当者が急に退職して、Google Driveのアカウントを削除したんです。そうしたら、その人がずっと管理していた見積もりのテンプレートや取引先リストが、翌朝から誰もアクセスできなくなってしまって……」
悪意があったわけではありません。本人も引き継ぎのつもりでファイルを「共有」していた。けれどその「共有」には、見落としがあったのです。
ファイルが保存されていたのは、その人個人の「マイドライブ」でした。アカウントを削除した瞬間、ファイルのオーナー権限ごと消えてしまいました。
ここで「アカウント削除がいけなかった」と思う方が多いのですが、そもそも、マイドライブに置いたまま共有リンクを渡していたことが根本の問題だったのです。マイドライブは個人だけで管理するものを置く場所。他の人と共有するファイルを置く場所ではない、と考えた方が事故を防げます。
マイドライブは「自分のデスクの袖机」、共有ドライブは「会社の共有キャビネット」
所有権の話をシンプルに整理してみましょう。
マイドライブは、自分のデスクの袖机です。鍵がかかっていて、自分だけが使う引き出し。自分のメモや個人的な資料を入れておく場所です。自分がいなくなれば、中のものに誰もアクセスできなくなります。
共有ドライブは、オフィスの共有キャビネットです。キャビネット自体は会社のもので、鍵を持っているメンバーが変わっても、中のファイルはそのままです。誰かが退職しても、ファイルは消えません。
他の人と共有するファイルは、最初から共有キャビネット(共有ドライブ)に入れる。
これが、Google Drive を組織で使う際の基本原則です。
マイドライブと共有ドライブの違いを整理する
【マイドライブ】
オーナー : ファイルを作成した個人
退職・異動時 : 引き継ぎ手続きが必要。アカウント削除でファイルが消える可能性あり
権限管理 : ファイルごとに個別設定(バラバラになりやすい)
検索・共有 : 「共有されているファイル」に混在するため見つけにくい
【共有ドライブ】
オーナー : 共有ドライブ(組織)
退職・異動時 : アカウントを削除してもファイルは残る。引き継ぎ不要
権限管理 : メンバーロール(権限レベル)で一元管理
検索・共有 : ドライブ内で体系的に整理でき、メンバーは全員アクセス可
退職者が出ても困らないのは、オーナーが「組織」だからです。メンバーが去っても、ファイルはドライブにそのまま残ります。
ファイル共有の事故は、Googleだけの話ではない
実は、ファイル共有にまつわる事故は昔から繰り返されてきた問題です。
Windowsのファイルサーバーが職場に普及した時代から、こういったトラブルは絶えませんでした。「あのフォルダを誰かが誤って削除した」「アクセス権を変えたら見えなくなった」「退職した人の共有フォルダが宙に浮いた」——思い当たる方も多いのではないでしょうか。
原因はいつも同じです。個々のファイルやフォルダに対して、人ごとに細かくアクセス権を設定するから事故が起きる。
誰が何にアクセスできるのかを把握できなくなる。管理者ですら全体像を掴めなくなる。その状態が、事故の温床です。
Google Driveも例外ではありません。ツールが変わっても、原則は変わりません。
「共有するときは、先に共有ドライブへ移動する」という習慣
私自身は、誰かとファイルを共有したいと思ったとき、わざわざ共有ドライブに移動してから共有するという手順を踏んでいます。
マイドライブで作ったファイルをそのまま共有リンクで渡すのが一番手軽ですが、それをやり続けると「他人と共有すべきファイルがマイドライブに溜まる」状態に陥ります。
ひと手間かかるのは事実です。でもそのひと手間が、半年後・1年後のトラブルを防ぎます。
この「共有ドライブ経由で共有する」という習慣は、最初は面倒に感じるかもしれません。ただ、一度身についてしまえば逆に「マイドライブから直接共有するのが気になる」という感覚になってくることでしょう。
Googleも「正しい使い方」の方向に動いている——2025年9月の仕様変更
2025年9月22日、Google は Drive の共有権限に関する重要な仕様変更を行いました。
内容を簡単にいうと、フォルダ内の個別ファイルやサブフォルダに対して、親フォルダより厳しいアクセス制限を設定できなくなったという変更です。つまり、権限管理は「フォルダ単位の一律管理」が原則になりました。
これまでは「フォルダの中の特定ファイルだけを特定の人に見せない」という細かい設定が可能でしたが、この変更でその設定が廃止されました。
この仕様変更は、Google が「ファイルの権限はフォルダ構造で整理するべき」という方向を明確に推進した結果といえます。フォルダを正しく設計して共有ドライブで管理することが、Googleの考える「正しいファイル管理の姿」なのです。
共有ドライブのメンバーロール(権限レベル)
共有ドライブには5段階の権限が用意されています。
| ロール | できること |
|---|---|
| 管理者(Manager) | メンバーの追加・削除、ドライブの設定変更、すべてのファイル操作 |
| コンテンツ管理者(Content Manager) | ファイルの追加・編集・移動・削除。メンバー管理は不可 |
| 投稿者(Contributor) | ファイルの追加・編集のみ。移動・削除は不可 |
| コメント投稿者(Commenter) | 閲覧とコメントのみ |
| 閲覧者(Viewer) | 閲覧のみ |
一般的に、日常的には「投稿者」か「コンテンツ管理者」が多くのメンバーに割り当てるロールになるでしょう。「管理者」は総務・情シス担当者など、ドライブ全体を管理する役割を担う人に限定するのが安全です。
共有ドライブのフォルダ設計——失敗しない3パターン
原則:組織単位で分けるだけでいい
フォルダ設計で大事なのは「シンプルに組織単位で分ける」という一点です。
- 部門ごとの共有ドライブ(営業部、経理・総務など)
- チームごとの共有ドライブ(プロジェクト単位など)
- 役員・管理職だけの共有ドライブ
- 全社共通の共有ドライブ(社内規程・マニュアルなど)
この4種類を組み合わせれば、ほぼすべてのケースをカバーできます。個々のファイルに対して細かくアクセス権を設定する必要はありません。「誰がこのドライブのメンバーか」だけを管理すれば十分です。難しい設定をしようとするほど、事故のリスクが上がります。
以下に、組織の規模別に具体的なパターンを3つご紹介します。
パターン1:部門別ドライブ(規模:30人以上)
共有ドライブ:営業部
├── 01_提案書・見積もり
│ ├── テンプレート
│ └── 2026年度
├── 02_契約書・発注書
├── 03_顧客情報(要アクセス制限)
└── 04_社内報告・週次レポート
共有ドライブ:経理・総務
├── 01_経費精算
├── 02_請求書・領収書
└── 03_人事・労務(管理者のみ)
部門ごとにドライブを分けることで、「見せたくない情報が他部門に漏れる」リスクを防げます。
パターン2:機能別ドライブ(規模:10〜30人)
共有ドライブ:全社共有
├── 00_社内規程・マニュアル
├── 01_プロジェクト
│ ├── PJT_2026_○○システム
│ └── PJT_2026_△△案件
├── 02_営業資料
└── 03_バックオフィス
共有ドライブ:経営会議(管理職のみ)
小規模の組織では、ドライブを分けすぎるよりも「1つのドライブ+フォルダ単位の権限制御」で管理するほうがシンプルです。
パターン3:プロジェクト横断ドライブ(案件が多い組織向け)
共有ドライブ:プロジェクト管理
├── _テンプレート(全員参照可)
├── 2026_A社_Webリニューアル
│ ├── 01_提案
│ ├── 02_設計
│ └── 03_納品物
└── 2026_B社_システム移行
案件単位でフォルダを区切り、関係者のみにアクセスを絞る使い方です。次のセクションで紹介する「限定アクセスフォルダ」と組み合わせると効果的です。
2025年2月追加の「限定アクセスフォルダ」を活用する
2025年2月18日、Google は共有ドライブに「限定アクセスフォルダ(Limited Access Folder)」機能を正式リリースしています。これはフォルダ単位でアクセスできるメンバーを絞り込める機能です。
これ以前は、共有ドライブのメンバーは原則としてドライブ内のすべてのファイルにアクセスできました。機密性の高いフォルダに別途権限を設定するのが難しく、現場では「機密ファイルは別のドライブを作る」という回避策をとっていたケースも多かったのです。
限定アクセスフォルダを使うと、たとえばこんな設計が可能になります。
共有ドライブ:全社共有(メンバー:全社員)
├── 00_社内規程・マニュアル ← 全員閲覧可
├── 01_営業資料 ← 全員閲覧可
└── 03_人事・給与情報 ← 【限定アクセス】経営者・総務担当のみ
つまり、1つのドライブの中に「全員が見られるフォルダ」と「特定の人しか開けないフォルダ」を共存させることができます。ドライブを分けすぎず、かつ情報の機密性も守れる、バランスのよい設計が実現しやすくなりました。
実際の移行ステップ——マイドライブから共有ドライブへ
「仕組みはわかった。では、今あるファイルをどう移すのか」が現場での最大の悩みどころです。
実際には理想通りにはいかないものです。組織規模にもよりますが。以下の流れが現実的かと思っています。
ステップ1:過去は後回しでいい——今日からの習慣を変える
「マイドライブにあるファイルを全部棚卸しして、スプレッドシートに一覧化して……」とやろうとすると、たいていそこで止まります。完璧にやろうとしないことが、移行を成功させるコツです。
過去のファイルはひとまず置いておく。今日以降、誰かと共有するファイルは共有ドライブへ——これだけで十分です。
半年も経てば、よく使うファイルの大半は自然と共有ドライブに移っています。過去のファイルは、必要になったタイミングで少しずつ移せばいい。いっぺんにやろうとしないことが鉄則です。
ステップ2:共有ドライブを作成する
Google Workspace の管理者(または「共有ドライブを作成できる権限」を持つユーザー)が共有ドライブを作成します。
- Google Drive の左サイドバーにある「共有ドライブ」をクリック
- 「+新規」ボタンから共有ドライブを作成
- 名前をつけてメンバーを追加し、ロールを設定する
ステップ3:フォルダ構成を先に作る
ファイルを移す前に、まずフォルダ構成だけを作っておきます。「ファイルを移しながら整理する」のは混乱のもとです。骨格を決めてから移行するのが現場で学んだ鉄則です。
ステップ4:ファイルをドラッグ&ドロップで移動
マイドライブのフォルダや個別ファイルを、共有ドライブ内の対象フォルダへドラッグ&ドロップして移動します。
移動時の注意点:
- マイドライブから共有ドライブへの移動は「コピー」ではなく「移動」です。移動後は元の場所から消えます
- 移動できるのは、対象ファイルの「オーナー」か、共有ドライブの「管理者」権限を持つユーザーです
- 外部ユーザーが所有するファイルは移動できないことがあります(その場合はショートカットが作成されます)
- 大量のファイルを一度に移動すると反映に時間がかかる場合があります。段階的に進めるのが安全です
ステップ5:旧リンクの通知と確認
移行後は、チーム全体に「新しいファイルの場所」を共有しましょう。ブックマークや以前のリンクでアクセスしようとしたメンバーが迷わないよう、メールやチャットで案内するのを忘れずに。
まとめ
- 「マイドライブに置いたまま共有リンクを渡す」のが根本の問題。他の人と共有するファイルはまず共有ドライブに移動してから共有する習慣を身につけましょう
- フォルダ設計は移行前に決める。組織の規模と情報の機密性に応じて、部門別・機能別・プロジェクト別の3パターンから選ぶのが現実的です
- 2025年9月の仕様変更は「フォルダ単位で管理する」方向へのGoogleからのメッセージ。正しいフォルダ設計で共有ドライブを運用すれば、権限管理の煩雑さも解消されます
シリーズ前後記事へのご案内
前回(第2回):Google Workspaceを入れたのに使われない——定着失敗の5つのパターンと現場支援で見つけた解決策


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